振込み入金には礼状を
「金集め」は官民を問わず難しい

 お金を集めることが難しいのは古今東西、官民問わず共通のようです。
 例えば公共料金といわれてる、電気・水道・ガス・電話・NHK受信料そして 税金でさえ100%が整然と集められている訳ではありません。「集金率」又は 「集受率」と呼ばれるこれらのパーセント数字は各自治体・事業体とも公表していないので 私達には知る由もありませんが、恐らく90数パーセントだと思います。
 また、私達はこれらの料金を大抵、口座からの自動引き落としで支払っていますが、 これも100%の人々が利用している訳ではありません。ある利用者が「自分は自動引き落とし は嫌いだから集金に来て下さい。」と強行に申し入れたら、「分かりました」と言って 毎月集金にお邪魔しなければなりません。税金以外は。そんなそんな実情から 各事業体も未だに集金係という人を雇って毎日集金に歩いているのが実情です。


脱サラして初めて知る集金の難しさ

 33才まで工務店に勤めていた私は、その会社の経理部門がしっかりしていたお陰で、 集金のために一度も出向く必要が無く、ただ良い仕事(建物)を期限内にきっちり造って お渡しすれば自分の役割を果たせたと思っていました。またそれで日が来れば給料、ボーナス が貰えたので、特に集金が難しいとは考えませんでした。
 ところが、昭和54年、33才でその会社に暇を頂いて、積算事務所を 開業した翌月からは様子が随分と変わりました。商品(積算書類)をお渡し する時に現金で支払って下さるお客様も何人かはありましたが、それ以外は大抵、 毎月20日締め切りで翌月10日払いとか、20日に集金に来て下さい、と いうことになります。
 そうすれば当然、指定された日に何を置いても先方にお邪魔しなければなりません。そうしなければ いくら日が来てもお金を頂くことが出来ないのですから。脱サラ者がお金の有り難味 を初めて実感するのが、この集金ではないでしょうか。


支払い状況は各社で色々

 今でこそ、お客様のほぼ100%が銀行振込で支払って頂ける世の中ですが、21年前私の 開業時はごく一部のお客様を除いた以外はほとんどが集金でした。そして、支払日は各社色々で5日、 10日、15日、20日、25日月末と6種類もあるので、どのお客様は何日、といちいち覚えて おかなければなりません。日を誤ると早くても遅くても払ってもらえないからです。
 有り難くない支払いに方法に「手形払い」というのがありますが、こちらの方は幸いにも 21年間でたった1回の経験しかなく、あまり詳しくないので、ここでは省略します。
 集金に行った私達に対して暖かく払って下さるお客様からそうでないお客様まで これも十人十色です。いいお客様は、私達が行く前に封筒に小切手を入れ、〇〇様と 宛名が書いてあり、領収書と引き換えにサッと下さる所がありました。その反対は 、その会社に着くと玄関前に同じく集金に来た人達の行列が出来ていて その最後尾に並び、1時間も待たされたことがありました。何故そんなに時間が掛かるのかは 、私の直前の人に順が回って来た時、理解できました。


人間お金を貰う時が一番弱い時

 集金に来た人の行列で私の直前は材木屋さんではなかったかと思います。支払いを している経理係(と言っても社長の奥さん)は、〇〇邸の現場ではこんな不都合があった。 △△邸では納入が遅れて手待ちを喰った。などの内容が書かれたクレームノート?を見ながら、 材木屋さんの落ち度を一通り並べ、挙句の果て、これだけ負けてくれないか?という交渉をしていました。
 材木屋さんも額を減らされてはならないと必死の防戦をします。両者が妥協するまでには当然時間が 掛かります。なるほど、それで行列ができるのか。納得がいきました。幸いにも私の場合はノークレーム だったのか、又は金額が少なかったのか、すんなりと小切手を渡してくれました。が行列の後ろ の方の人達はみんな、不愉快そうな顔で仕方なく並んでいるようでした。そうかと思うと 支払額の内、千円未満は当然のようにカットして払われる所もありました。
 いずれにしても、払う方と受け取る側では当然、力関係が違います。受け取る側は多少の 無理難題を言われても我慢せざるを得ないのが現実というものです。だからと言って 相手の弱みに付け込んで支払額を値切るのは汚いという評価を受けても仕方のないことで しょう。
 私の代わりに集金に行った家内がそこ一軒の為、往復2時間プラス1時間で約半日掛かったと 言ってブウブウ言うのを機会に、以降は「あいにく忙しいので」と言ってお断りすることにしました。


振込みに対してお礼のハガキを出す

 やがて時代とともに、集金から振込みにして下さるお客様が増えていき、現在では100%が振り込んで 下さるようになりました。
 ところが、この振込みが一般的になると有り難いという感謝の念が次第に薄れてしまい、いつの間にか 当たり前になってしまうのも我々凡人の情けないところです。
 昔、集金に行っていた所が振り込みに切り替えた当初は、銀行より入金の通知があるとすかさず お礼の電話を入れたものでした。
 それもしばらくすると止めてしまいました。マズイなあと思いながら、ある日読んだ 「一枚のハガキで売上を伸ばす」(竹田陽一氏 著)に家内共々いたく感心いたしました。
 「これからは振り込んで下さったお客様全員にお礼のハガキを書きます。」と家内が決意してくれました。 それはちょうど区切りの良い平成元年正月のことでした。
 この本の著者、竹田陽一氏が「お礼のハガキ」として、四季折々のイラストの入ったハガキを販売されて おり、用途別に文章も本の中で紹介されているので、いたって簡単に始めることができました。
 この振込みお礼ハガキを始めて何年経った頃でしょうか。思わぬ効果が現れました。 普通、10万円を請求した場合、一般的に銀行の取り扱い手数料として600円とその消費税30円の計 630円を差し引いた99,370円が当社の口座に入る訳です。集金に掛かる手間とコストが不要に なるのですから引かれて当然です。ところがこの手数料までお客様が負担して下さるという例が1社 2社と現れ出したのです。本当に有り難い話です。
 半日掛けて集金に行き、挙句、値切られて悔し涙で帰ってくるのとは真に天国と地獄の差です。
効果絶大のこのハガキ作戦も作業的には単純です。何せ文面と相手先が決まっているので 「書き溜め」が効きます。時間に余裕がある時に書いておき、銀行から振込みの通知があった夕方に ポストへ投函すればOKです。大切なのは継続することだと思います。
 もう一つ、このハガキの宛先は直接の担当者とはせずに、経理課御中とされることをお勧めいたします。 どちらかというと普段あまり陽の当たりにくいこの部門の方々に労をねぎらうことは大切です。
 ただし、このメリットを期待して、お礼ハガキ作戦を始められても効果のほどはどうでしょう。 何せ厳しい世の中ですから。

お礼ハガキ 表面 お礼ハガキ 裏面