専門業者の呻き声 その3

唯一、明るい話をしてくれる内装屋さん

 これまでお邪魔した、伝統ある3職種(木造大工、鉄筋、左官)の方の話はどうも暗いので、 何か明るい話を期待して、職種としては比較的新しい、軽鉄下地とボード貼りの業者を訪ねることにしました。
 私の勘ではこの職種がこの地方に普及して30年足らずではないでしょうか。時流で、内装材にも不燃化、軽量化、乾式化、 工事のスピード化が求められ、それまで主流であった木下地や、モルタル(湿式)に取って代わって急速に普及しました。
 当初と比べ進歩したのは道具です。当時、部材の切断は専ら「金鋸」でギーコギーコ挽いていたものですが、 今は専用のハサミが出来、ワンタッチです。
 また回転鋸はチップソーのお陰で精度も向上しました。特に目を見張るのはレーザーレベルを駆使することにより、 空中に思いのままの「墨」を出せるので天井に複雑な三次元曲線を描いたり、波、うねりも施工可能になりました。
三重県立総合文化センターや、三重県立看護大学の複雑な天井はこの会社の苦心の作です。 この職種の領域は年々拡がり、最近は 住宅分野まで入ってきました。
 このシリーズでは初めて明るい話を聞くことが出来ましたが、どこでも悩みは付きものです。 最後はボヤキに変わってしまいました。
 ゼネコンとの契約は、杭、コンクリート、鉄筋などの躯体に始まり、内装業者は最後に廻されます。 契約してもらえないまま仕事に 取り掛かり、終わる頃、「これだけしか予算が残ってないからこれで我慢してくれ」 式の注文書が送られてきて終わりです。ですからバブル景気に沸いた時期でも少しも「いい目」には合わなかったとのことです。
 もう一つ、これは各職種に共通している問題ですが、労働大臣認定の一級技能士の資格保持者に、これと言って 社会的にメリットが 与えられていない点です。事務所の壁に賞状がズラリと並んでいるものの真に「壁の華」。 努力して取得した職人さん達に待遇面で返してやれないのが歯がゆいのです。
  この問題については各職種の親方達が会合を開き、何とか道はないか、お役所に陳情の準備中だそうです。


おわりに

 このように次々と親方や番頭さんの話を文にしますと、スムーズに事が運んだように見えますが、 何せ原稿書きは本職(積算)の片手間、先方の都合と私のゆとりが合った時取材し、仕事が一段落した時 文章化する訳ですから間隔があります。取り掛かってから約1ヶ月、このことを念頭において行動しているわけ ですが、これは結構楽しかったです。
 今回はこの4職種で一旦終了し、この先、また機会があれば設備関係や、生コンさん、 家具屋さんなどにもお邪魔し、色々な方の声を拾い集めたいと思っています。