思わぬ所に宝の山「刃物研ぎ」
昔は「日曜大工」今は「DIY」。日本全国、いたる所にホームセンターが出来、これを楽しむ
人が多くなってきました。私もその1人です。
ところがこれは土日など休日の昼間しか楽しむことができません。それも天気の良い日。
このような条件の他、作るものや、修理する場所もやがて底を尽きます。
そこで私は家具造りの方へ、少し方向を変えてみました。こちらの方は作る物が小さいので、
少しの作業スペースさえあれば、夜や雨の日でもOKです。しかしこれとてネタは尽きます。人様の
注文で造る腕前になったとしても、そう次から次へと注文が入る訳ではありません。
自分の腕(本職以外)を活かして何か人様の役に立ちたいと考えていました。そんなある日、
近隣の町の商工会が主催する「フリーマーケット」にぶらりと行ったところ、その一角で地元の大工さん
とおぼしき3人の人が回転式の刃物研ぎ機を使って包丁を研いでいるのです。そこへ主婦達が、
新聞紙に包んだ包丁を持って次から次へと集まって来ます。大工さんは文字通り「フル回転。」
まてよ、自分も日曜大工を始めてもう30年近くなります。その間何度となくカンナやノミを研いでいる。
「これだ!!」と気が付きました。
先ず手始めは自分の所の包丁、次に妻の実家、両隣、友人、社員さん宅の包丁と順々に手を広げてゆくうち
に自信がついてきました。そんな中私の親しい友人に看板業を営む松島さんという人がいます。
彼の家の包丁を研いだところ、お礼に看板を書いて頂きました。
人通りの多い道路ならともかく、団地の一角では大した効果はなかろうと思っていたところ、意外にも
ポチポチ、看板を見た女性が「お願いできますか?」と言って入って来るのです。これはおもしろい
話を聞くと、犬の散歩でとか、夕方のウォーキングで、或いはゴミ出しで、などが看板を見たキッカケだそうです。
本業(建築物の見積)を終えて帰宅し、夕食後の1時間半、預かった包丁やハサミをピカピカに研いでお渡しすると、
女性達は大喜びで、こちらまでいい気分になります。
代金は本職の研ぎ屋さんの半値の8掛け。つまり200円です。「本当に200円でいいのですか?」
大抵の方がいぶかしそうにおっしゃいます。「楽しみでやっっているのでこれでちょうどいいです。」
と答えるとやっと安心されます。
それまで、何気なく、自分の都合でカンナやノミを研いでいたのを、ほんの少し方向を転換するだけで
こんなに皆さんに喜んで頂けるなんて、世の中本当に面白いですね。
皆さんも一度自分の趣味や特技を見直されたらいかがでしょう。思わぬ所に宝の山が隠されているかも
しれませんよ。