晴れた日には何をするにも気分が良く、逆に雨の日にはうっとうしく行動が消極的になる。
天気に対してほとんどの方がこんな感情を持っておられるのではないでしょうか。私もそうでした。
「た」と言いますのは過去の事であり、最近はむしろそうではなくなった、という意味です。いや
むしろ雨降りを歓迎するようになったのです。その原因は今回のテーマでもある「雨水利用」にあります。
雨が降り出すと、我が家に3台、会社に一台設置した雨水タンクに水が貯まり始め、その量を見ては満足する、
そんな経過を紹介させていただきます。
もう6〜7年前になるでしょうか、現在18才になる息子が小学生のころ、雨が降ると急いで雨樋
の所へ飛んでいって、バケツを3.4つも並べ順々に水を貯めては満足そうな顔をしている頃が
ありました。そして翌日母親に「お母さん。花にはこのみずをやってね」と言って学校へ出かけて
行ったものです。
その頃は私も家内も彼の行動を微笑ましく眺めているだけで、それ以上の事は考えませんでした。
それから数年経って、多分、平成10年の梅雨時ではなかったかと思います。
ある夜、NHKテレビの「未来派宣言」という番組を何気なくみていましたところ、テーマが確か、「天の恵みを生かそう、
都会にミニダムを」で、東京の墨田区役所にお勤めの村瀬誠さんという方が登場され、墨田区内の民家の軒下び設置された
雨水タンクや、相撲でお馴染みの国技館の床下が全面ピットになっており、そこに雨水を貯めて再利用しているお話を
されていました。その時のお話や実例として見た民家の雨水タンクが例の息子の並べたバケツとピタっと一致して「これだ」
と膝を打ったものです。その時の内容を概略して再現してみます。記憶のある方もいらっしゃるかもしれません。
梅雨時に少雨で渇水の夏になると、〇〇ダムの貯水量が40%を割ったので、20%の取水制限を
行っているなどのニュースを耳にすることがあります。飲料水といわず、工業用水といわず、大抵、我々が使う水は遠く離れた森林に
降った雨が谷に集まり川となり、その川を堰き止め、汲み上げています。
その距離近くて数十キロメートル、遠くは数百キロメートル以上に及びます。
大消費地、東京では利根川と荒川水系上流に造った、小河内、八木沢、藤原、薗原、奈良俣、草木、浦山等、多数のダムに貯えた水を
遠路、引っ張ってきて利用している訳です。その一方で、都市部に降った雨は土に浸透する分を除いて大部分は側溝から川に流れ込み、
海に排出してしまっているのです。この矛盾に気が付いた村瀬誠さんが雨水利用を提唱し、実現した施設を紹介している内容でした。
その代表例が国技館下の地下ピットです。また、地方自治体でもこの雨水利用を奨励しており、現在32の自治体で、家庭用タンク1台
に付きおよそ20,000円の補助金を支給しています。ただ、この動きは地味なため、ほとんど知られていないのが現状です。
本誌(建築と積算)でも何度か取り上げてもらっていますが、私の趣味は日曜大工に始まった家具造りと、最近加えた刃物研ぎで
これらは「建築」の部類ですが、今度の雨水タンクはどちらかといえば「設備」の方に入ります。しかし、「これは」と思った物は何でも
造ってみたい、この欲求は同じです。原理は簡単だから何とかなるだろう、こんな気で次の日曜日を待ちかねて策を練りました。
我が家は1FがRC造の車庫で、その上に木造の二階建てが乗っている構造でそのRCからバルコニーが出ているので、そこにタンクを
置き、竪樋を突っ込むことにしました。バルコニーから地上までは2.5メートル程の落差があるので、継いだホースから水を飛ばすことも
可能です。その頃は雨水タンクなる製品がある事も知らないので、ホームセンターで農業用ポリタンク(120リットル)を買ってきて
樋からの雨を受けることにしました。
竪樋を途中でカットして、エルボで曲げてタンクに突っ込むのは簡単ですが、満タンになった後のためオーバーフロー管を付け、その下に
もう一杯の大型バケツを受けることにしました。
このセットを作り終え、雨の降るのを待つ気分は格別でした。小学生の頃の遠足を指折り数えて待つあの気分です。それから数日後、待望の雨が
降り、樋を伝わって計算通り、タンクの水がアッと言う間に一杯になり、次はオーバーした分が下に受けてあるバケツに入りました。
それを越えると後は側溝です。何とも言えない満足感でした。
私の趣味はこんなことですが、家内の方はと言うと、これは180度違います。彼女は手先は不器用ですが全身を動かして汗をかくことが良いらしく 、昔はバレーボール、今は卓球の他、花や野菜を育てて楽しんでいます。私の家は住宅団地ですが、運の良いことに、南隣の地主さんが 家を建てずに放置されています。この70坪の土地を無料でお借りして彼女が好きなように使わせてもらっています。自然相手の趣味ですから 、時として水が欲しくなります。水道からホースで引っ張っていましたが、これが結構面倒で、畑に水があれば便利だがなあと思っていました。 ちょうど良いことにわが家の「離れ」が隣地近くまで張り出していて、その樋を少し引っ張れば、菜園に置いたタンクまで届きます。 かくして、スマートさには欠けますが、絵のような2号タンクの出来上がりです。これにより菜園では使えきれないほどの水が、このタンク 一杯に貯まっています。ここでもオーバーフローした分をもう一度「子タンク」に受け利用するやり方は変わりません。「潮田方式」です。